ライブラリー キャラメルラテ

オリジナル小説書いてます

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

俺の話を聞きたい?それでは話して差し上げようーー。 俺の目の前には一人の老人がいた。サンタクロースのように白く長い服を着て、木の杖をついた老人だった。俺は彼に向かって話しはじめたーー。 スランプもスランプ、スランプ中のスランプとはこのことか…

下書き

「自分のバイト代使いなさいよ。それに、そんな聞いたことない民間資格なんか取ってどうするのよ」ウンザリだった。俺は広告が載っていた新聞をグシャッと丸め、半ば衝動的に家を出たら、平日午後四時過ぎ。住宅街の一角を手ぶらでずんずん歩けば、下校途中…

無情の夢③

それからどこをどう歩いたのか、くるみにはさっぱり記憶がなかった。気がつくとくるみは着心地のいいグレーのパジャマを着て、自室のベッドに寝ていたのだった。クリスマスイブは、章一と向かい合って市販のショートケーキを食べるうちに過ぎた。ケーキに添…

無情の夢②

なんで私、佐山さんにあんなこと言っちゃったんだろう。もう消えてしまいたい……。 晴彦の言葉にくるみは、目の前が暗くなるような感覚に陥った。くるみは撮影所の最寄り駅に戻る道とは反対方向を、ふらふら歩いた。辺りは一段と暗くなり、気がつくとくるみは…

無情の夢①

十一月中旬の冷たい夜風が肌を突き刺す午後九時過ぎ。東京メトロ沿線、駅前の大通りを一本脇に入った舗道を、一人の男が歩いていた。年格好は二十代後半といったところ。まっすぐ上がり、眉尻にかけて曲がった黒い眉、同じ色のはっきりした瞳。やや東洋人離…